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経営者や事業責任者が知っておくべき、 「リーンスタートアップ」を外注で実現する方法

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新規事業でアプリやシステムの開発が必要な場合、可能なら内製が良いとは思いますが、どこも人材不足のこのご時世では優秀な人材を集めて自社で抱えるのはなかなか難しいのが現実です。そのため、開発は外注という選択肢を取っている経営者や事業責任者の方は多いことでしょう。

前回は外注でリーンスタートアップが実現できない理由という主旨の話を書きましたが、もちろん外注でリーンスタートアップの手法を実現している企業もあります。なぜ上手くいく場合といかない場合があるのか?

この違いを産みだしているのはスキルや経験を別にすれば「リーンスタートアップ」、「アジャイル」、「契約」の3つをセットで考えているかどうかが、重要なのでは?と思っています。経営者や新規でサービスを起ち上げる事業責任者、とりわけ開発を内製ではなく外注している方々にはご一読いただければ!

新規事業起ち上げに有効な「リーンスタートアップ」

インターネットサービスやスマホアプリはまさに「スピード」が勝負の世界です。数年掛けてリサーチ、市場調査、研究開発等を行っている暇などありません。温めているアイデアに価値などほとんどなく、いかに誰よりも早くアイデアを実現し、世に出し、顧客の望む方向へ改善し続けることが出来るかが鍵です。

今やインターネットとは無縁と思われていた事業領域でもWeb対応、アプリ対応はほぼ必須の状況です。ウチの事業はWeb、アプリ対応なんてしなくても大丈夫!などとアグラをかいていると、瞬く間に新しいプレーヤーに市場やシェアを奪われてしまいます。そんなスピード勝負の世界で有効なマネジメントの一つが「リーンスタートアップ」という手法です。

リーンスタートアップに適した開発スタイルとは?

前回書いた通り、リーンスタートアップとは、不確実性の高い新規サービスを世に出す際に必要最低限の機能を持ったモノやサービス(MVP)を市場に出して、ユーザーからのフィードバックを得ながら短期間のサイクルで仮説・検証を繰り返して本質的なニーズや解決策を探り当てていく手法です。

つまり、開発も短期間のサイクルで回せるようなスタイルでなければ、リーンの手法は実現できません。これを実現できる一つの開発手法がアジャイルという開発スタイルです。

 

ウォーターフォールとアジャイル

ウォーターフォール

従来の開発手法は「ウォーターフォール」と呼ばれています。ウォーターフォールは初期に莫大な時間を掛けて、サービスの開発範囲を「全て」定義して設計し、実装して、最後にテストを行います。

問題なのは最初から「全て」を定義して作ろうとする点にあります。新規ビジネスは往々にして市場環境、ターゲット、ソリューション等のあらゆる仮説が正しいかどうかが分からない不確実性の高い状況にあります。
それなのに「全て」を最初に詳細に設計してその「全て」が予定通りに顧客に利用されるようになる等、設計者が預言者でもない限り不可能でしょう。更に、途中で新たな有益な情報を得て仕様を変更したいと思っても、後戻りや途中で一部を改修する事を想定していない開発スタイルのため、修正には多大な時間・労力・調整が必要になってしまい開発が大幅に遅れる上に現場を疲弊させます。

以上のような特徴を持つため、ウォーターフォールは利用ユーザーが明確に分かっていて、業務フローも固定化されて可変しない場合(勤怠管理等の社内で使う業務システム etc)には有効ではあるものの、新規事業等でターゲットユーザーも不明瞭で、ビジネス環境も日一日と変わる不確実性の高い場合には適していないと言えます。

アジャイル

一方、アジャイルでは、分析、設計、実装、テストを短い期間で並列に行ってそれを繰り返していきます。ユーザーにとって価値の高い機能から開発し、短いサイクル(1週間〜1ヶ月程度)で動くソフトウェアを完成させます。文書ではなく、実際に動くソフトウェアを一定のサイクルで開発していくのが特徴です。

そのためウォーターフォールの場合に“あるある”な、「文書ではお互いに認識が合っていたのに実際に動くモノを見たら全く想定と違う!」というような受発注者お互いにとって不幸な事態が起こりません。まぁ、大体は仕様書の細かい文言まで責任者は目を通していない事が多いですし、全員の認識を文書で細かく定義する等は莫大な労力が掛かります。その割に多大な効果も期待できないので、文書を作るにしても一定の方向性が合意できれば、実際に動くモノを開発して、確認できるようにした方がお互いの認識は早く揃えやすいと思います。

また、アジャイルでは途中で当初の仮説を反証するような事実や、ビジネス環境の変動、新しい有益な情報が入った場合には即座に修正や計画変更が入るのが一般的ですし、機能の優先順位も途中で変更されることも、サイクルが短いためにウォーターフォールと比較して影響も小さくて済みます。

よって、不確実性の高い新規ビジネスを起ち上げる際にリーンスタートアップの手法を採用する場合、顧客からのフィードバックや事業環境の変化によって、仕様や優先順位を1週間や1日単位で変えていくのですから、開発スタイルはウォーターフォールではなくアジャイルが適しているのは明白です。

アジャイルを実現する契約形態とは?

恐らく多くの外注での新規サービス開発時の失敗の原因はこの契約形態に依存しているのでは?と考えています。「リーンスタートアップ」、「アジャイル」はご存知の方は多くいらっしゃることでしょう。にも関わらず、契約はそれらに全くもって不向きな「一括請負契約」という形態が選択されることが多くあります。

「一括請負契約」とは何を作るかをお互いで定義してその「成果物」の納品・検収をもってして契約遂行となります。更に、一括請負契約になると前回記載の通り、受発注者間でゴールの不一致が起こる上に、日々改善や修正が必要にも関わらず都度見積りの調整をしなければならない等、不必要なコミュニケーションコストが発生してスピード感が全く出なくなります。
何を作るかは週次や日次で変わることもあり、成果物を都度詳細に定義していくなど不可能に近い「アジャイル」の特徴とは相容れない契約形態なのです。

  

それでもこの契約が結ばれてしまうのは、そもそも開発会社から他の契約形態が提案されていなかったり、発注側が計画の可変が前提でのアジャイル型に不安を感じ、予算や納期が約束される事を重視して選定してしまうからではないかと考えられます。経営者の方や事業責任者の方はリーンスタートアップやアジャイルの特性を理解した上で、プロジェクトの形態に応じて「一括請負契約」にするか否かを判断する必要があるのです。

では、どのような契約形態ならばゴールを一致させることが出来、スピード感を保てるのか?大きくは下記の2パターンが考えられます。

1. 期間契約

要は、一ヶ月で何日間、何時間働いたからいくら?で契約する形態です。この期間契約には下記2点のメリットがあります。

・ ビジネス上のゴールを一致させられる
・ 急な仕様変更でも調整が不要

なぜゴールが一致させられるかと言えば、期間契約の場合ビジネスが成功すればするほど新たなシステムの構築、改善、運用が必要になるため、開発会社側も開発人員を増員したり、長期での契約が約束されて収益を増大させることが出来るためです。

加えて、期間での契約になるため急な仕様変更であっても営業との見積り調整は必要ではなくなります。とはいえ、その分契約している時間を無駄に消費しないための開発マネジメントスキルや慣れはある程度必要になってきますし、経験不足のチームだと効果が出辛かったり、選定や契約時に両者の信頼関係も必要になります。

そのため、最初は本当に小さなコア部分のみ切り出して「ウォーターフォール+請負契約」で行ったり、海外チームでコストを抑えて行うラボ契約などで回すなどで予算を抑えた中で実行するのも良いでしょう。

また、開発規模が大きくなってくるとチーム体制を構築しなければならないため、開発企業の人員に依頼した方が元々チームとしてもまとまっていますし、増員もしやすいため、派遣よりはそういった体制を構築できる組織や企業に依頼するのがベターかと思います。

2. 成果報酬契約

Webサービス内やアプリ内での売上を受発注者間で分け合う、レベニューシェアとも呼ばれているモデルです。例えば、簡単に書くと下記のようなモノがあります。

・売上の◯◯%を報酬として支払う。
・月額固定で◯◯円を最低限の開発費用と支払い、売上が◯◯円を超えた場合は超過分の◯◯%を支払う。

こちらは両者のビジネスゴールを一致させることができるのは明白です。ただ、大手の開発会社ならともかく、小さな開発会社だとキャッシュフロー的に少々この契約事態が厳しい場合も多くあります。また、シェアの割合はもちろん、ビジョン、ビジネスモデル、明確な役割定義など多くの部分で両者が納得しなければ進められないため、期間契約以上に信頼関係の醸成が重要なためパートナー選定は更に難しくなりますが、一度信頼関係が構築できれば強いチーム体制を外注で築くことができるでしょう。

まとめ

以上、長々と書いてきましたが、私の思う新規事業でシステム開発を伴う仕事を外注する際に成功率を少しでも高めるには、最初にも述べた通り前提として「リーンスタートアップ」、「アジャイル開発」、「契約形態」をセットにして考える必要があるということです。これらは相互にリンクしているため一つでも欠けた場合、実現は難しくなってくるのではないかと思います。

ただ、上記はあくまでも土俵に立つための前提条件です。リーンスタートアップやアジャイルを実現してサービスを成功に導くのには、リーダーが開発チームとビジョンやサービスへの共感を生み出して信頼関係を構築していく点が極めて重要ですし、チーム全体で経常的にスキルを養成・学習していく必要があります。

SEKAI LAB TIMES(セカイラボタイムス)は、アプリ・Webサービス開発を世界中のエンジニアチームに依頼・発注できるグローバルソーシングプラットフォーム「セカイラボ」が運営しているブログメディアです。


IKKEI OKUMA / Sekai Lab Pte. Ltd. COO
セカイラボの代表取締役COO。これまで、エンジニア・企画営業・ディレクターを歴任し、中国やベトナム等で海外開発プロジェクトを担当。日系企業が海外リソースを上手に活用できていない課題感から、セカイラボを設立するに至る。好きな国は、モロッコ。