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“人の行動を変えるサービスこそイノベーション” 日本のFinTech界を牽引するマネーフォワードのサービスづくり

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App Store、Google Play共に1位を獲得するのみならず、2014年のグッドデザイン賞も受賞している自動家計簿アプリ『マネーフォワード』。実は、単なる「家計簿アプリ」ではなく、「お金の悩みをトータルで解決する」サービスを目指しているのだそうです。ユーザーの潜在的なニーズ・悩みを探り解決するサービスはどのように作られているのでしょうか。株式会社マネーフォワードCTO浅野千尋氏と取締役都築貴之氏にお話をお伺いしました。

▼ポイント

・家計簿アプリは続かないけど『マネーフォワード』は自動だから続く
・ユーザーの声なき“潜在ニーズ”を探る
・サービスを熟知するエンジニアが主導でサービスを改善
・単なる家計簿ではなく「お金に関する悩みをトータルで解決」することがビジョン
・人の行動を変えるサービスこそイノベーション
・日本でもいずれ進むお金の電子化、企業のクラウド化に向けて、マネーフォワードがFinTech界を牽引する

イノベーションの起こりにくい金融業界に風穴を開ける

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−−私もこれを機に『マネーフォワード』を使用しはじめました。これは本当に楽で画期的ですね。このサービスはどういう動機ではじまったのでしょうか。

浅野氏:3〜4年前に海外のベンチャーによるFinTech分野のサービスで『mint.com』というサービスが海外では盛り上がっていました。BtoCのFinTechといえば『mint.com』というイメージがあり、ユーザー数も数百万人にのぼっていました。

※FinTechとは、「Finance」と「Technology」を掛けあわせた言葉で、金融分野でのITサービスを広く指している。

アカウント・アグリゲーションといって、クレジットカードや銀行のデータを集約してトータルで資産管理をする技術をベースとしたサービスが流行っていたのです。一方日本を見てみると、まだアカウント・アグリゲーション技術を駆使したサービスで、デファクトスタンダードとなるようなものはまだありませんでした。日本では金融業界の構造的にイノベーションが起こりにくい状況にあることもあり、なかなか新しいサービスが生まれにくかったのだと思います。そんな業界に風穴をあけて、本当にユーザーのためになるサービスを作ろうということではじまりました。

アカウント・アグリゲーション
異なる金融機関の複数の口座の情報を、単一のコンピュータスクリーンに集約して表示するサービスの総称。

家計簿アプリは続かないけど、『マネーフォワード』なら使い続ける理由

−−当時も家計簿アプリなどはもちろん色々とあったわけですよね?

浅野氏:家計簿アプリ自体は数多くありましたが、手入力のものばかりで、自動で連携というのはありませんでした。手入力だと続かなくて挫折した人がたくさんいたんですよね。
『マネーフォワード』は全部自動で連携することができる(上述のアカウント・アグリゲーションによって)ので、放っておいても続くのです。家計簿とは少し違う概念かもしれません。新しいお金管理の方法であると言えると思います。

−−実際に継続して使うユーザーが多いのでしょうか?

浅野氏:継続して使うユーザーは多いです。一度金融機関などとの連携を行うと、自動で情報を取得して更新してくれるので、3日坊主になることがないんです。入出金があればプッシュ通知で知らせてくれますし、たまに見るだけでも十分に便利なサービスになっています。

都築氏:口座などの連携をせずに、手入力機能だけで使っている人もいますが、そういう人にも続けて使ってもらえるように工夫しています。どちらにしてもリテンション率は高いと思います。

スマホファースト

−−はじめから今みたいに色んな機能がついていたのですか?

都築氏:はじめはここまで充実していませんでした。最初はWebサービスメインで、スマホは本当にシンプルな機能だけを持ったビューアー程度のものでした。ユーザーから、スマホからも直接入力・編集したいという要望が上がってきたことをきっかけに、スマホアプリに力を入れ初めました。現在はスマホファーストで開発を進めています。

−−今はスマホからの利用が多いのでしょうか?

浅野氏:そうですね。両方を使っているユーザーも多いですが、スマホからのアクセスが大半を占めています。

声なき“潜在ニーズ”を探る

−−新しい機能は、ユーザーの要望で付け加えていくことも多いのでしょうか。どんなプロセスで機能を決められますか?

浅野氏:ユーザーのニーズを最初にヒアリングするわけですが、本当のニーズって顕在化しているところだけではないんですね。基本的には今あるサービスの延長線上で、「ここをこう直してほしい」「こういう機能が欲しい」といった要望をいただけるのですが、実際には言ってくれないところ、さらにはユーザー自身が思いついてもいないところだけど、実は持っている「+αの要望」みたいなものがあると思っています。私達は、より大きなビジョンとして問題解決をしたいと考えているので、顕在的なニーズと潜在的なニーズの二軸で考えるようにしています。

潜在的なことに関しては、ユーザー自身も気付いていないことなので機能として出してみないとわからないところがあります。出してみて初めて、「こういう使い方があるんだ」と気付いてくれてフィードバックを送ってくれたりします。ただフィードバックをくれるのも一部の人なので、声なき声が大きいことも理解しています。ですから、行動ログを使って実際に「使ってくれているのか/使ってくれていないのか」を見るようにしています。

そうしたユーザーからのフィードバックや行動ログは、開発に関わっているエンジニア本人たちが直接見られるようにしていて、新しい機能や改善に関してもエンジニア主導でできるような体制にしています。

エンジニアドリブン!

−−そうなんですね。そうすると新規機能の企画などにもエンジニアが関わっていらっしゃるということなんですか?

都築氏:はい。要件定義、デザイン、実装、検証というソフトウェア開発の全ての工程にエンジニアが関わっています。

浅野氏:機能をつくっているエンジニアが一番サービスのことを理解しているとも言えるんですよね。考える人と実装する人が一緒の方が絶対に効率が良いので、エンジニアに対してユーザーの声などのデータを直接見ることができる環境を用意することで、ユーザーファーストとエンジニアドリブンという2つの文化を中心に据えられるような開発体制を敷いています。

都築氏:自分自身エンジニアとしてトップダウン体制の環境にいたこともあるのですが、そうすると腹落ちしないということがしばしばありました。今のようにエンジニア主導で話し合いながら進められる体制だと、エンジニア個人も腹落ち感があったうえで開発できるという利点があると思います。

使いやすさの追及もエンジニア主導で

−−UIというのはデザイナーさんが担当されるのでしょうか。

浅野氏:デザイナーとエンジニアが相談しながらという感じですね。要件定義の後にデザインというのが普通だと思うのですが、弊社の場合は、できるだけ高速にサイクルを回すために、要件定義して実装したあとにそこへデザインを当て込んだりする場合もあって、順番よりもスピードを重視しています。

−−かなり複雑な機能を非常にシンプルに見せていて、使うときにもほとんど迷うことがないので、すごいなと思います。

都築氏:デザインは、はじめは別の会社に外注していました。初期のエンジニアデザインから、見た目は大幅に改善されてきれいになったものの「使い勝手が良くない」といったユーザーからの声が多かったので、社内のエンジニアでどんどん改善をしていきました。

ユーザーが求める機能にできるだけ直感的に行けるということを重視しています。また見た目的なデザインだけでなく、パフォーマンスの向上も含めて使いやすくするための改善をしています。

−−そこもやはりエンジニア主導なんですね?

浅野氏:そうですね。弊社にいるエンジニアはみんな『マネーフォワード』というプロダクトが大好きなんです。エンジニアでありながら、『マネーフォワード』を自分自身でも使い倒していて、ユーザーとして「こうしたらもっといいのに」という思いを常に持っているので、自分で考えて改善に活かすことができています。

週一「リファクタリング・タイム」とは?

−−新規開発をする人と、既存の改修をする人とは分かれているのでしょうか?

都築氏:分かれていないですね。ただ、週に1回「リファクタリングタイム」というのを設けていて、エンジニアが各々直したいところを直すという時間があります。

浅野氏:機能追加に次ぐ機能追加では、コードがどうしても汚くなっていってしまいます。だからエンジニアとしてはベースを綺麗にするためにリファクタリングをしたい欲求があるんですよね。機能をいち早くリリースしたいビジネスサイドからすると、リファクタリングの重要性はなかなか理解しづらいようなのですが、そこも上から押し付けるような体制ではないので、エンジニア主導で意味のあることとして、しっかり時間を設けています。

家計簿だけではなく、トータルで「お金に関する悩みを解決する」サービス

−−「お金に関する悩みを解決する」ということを掲げられていると思いますが、個人ユーザーに対してどのような価値を提供していきたいと思っていますか?

浅野氏:現在「家計簿」というキーワードでサービスを提供していますが、本当はもっと幅広い概念で解決したいという思いでやっています。普通の家計簿アプリと『マネーフォワード』が異なるのは、家計管理だけでなく、資産管理もできるところなんですね。これをPFM(Personal Financial Management)と言ったりするのですが、家計簿の範囲ではなく「トータルのお金の管理」に関してのソリューションを提供しています。

現在Web版では「よそQ」と言って、将来のライフプランをシミュレーションするような機能がありますが、今後これをさらに発展させていきたいと思っています。

たとえば、結婚するとき、子どもが生まれたとき、家を建てるときといったタイミングタイミングで、様々なお金に関する悩みが出てくると思います。学資保険、補助金、住宅ローンに関することだったり、「どのくらい貯蓄すべきか」や投資に関することなど、そうしたあらゆる悩みをトータルで解決できるようにしていきたいです。

−−そうするとまだまだ今のアプリで提供していることというのは、一部ということですか?

浅野氏:まだまだです。やりたいことの10分の1もまだできていないですね。

都築氏:今でいうと、「持っている資産の見える化」はできていますが、では「その次どうしたらいいのか」ということについてはまだできていないので、そこを提案できるところまで持っていきたいと思っています。

『マネーフォワード』が人の行動を変えた!

−−ユーザーから「ここが良かった」というフィードバックってどんなものがありますか?

都築氏:無駄遣いが減った、節約のポイントがわかるようになったといった声はいただいています。

それから嬉しかったのは、「これまで現金で買い物していたけど、クレジットカードや電子マネーを使うようになった」という声ですね。ユーザーの行動を変えるサービスは多くないですし、そういう人の生活を変えるサービスこそが、イノベーションと言えると思います。サービスを使う前後で行動が変わるということは、社会に大きくインパクトを与えることですので。

浅野氏:弊社のアンケート調査で、月平均9,300円節約できているというデータがあります。また、「将来の資産形成について考えるようになった」といった声もいただいています。

家計簿は、つけて満足してしまう人も多いのですが、『マネーフォワード』では「つける」ことに関しては代わりにやるので、「お金に対して向き合う」時間を提供していきたいと思っています。

法人の「お金の悩み」も解決する

MFクラウド会計

−−法人向けサービスもされていますね。

浅野氏:アカウント・アグリゲーションをベースにBtoBも展開しています。もともとは、個人向けサービスを使っていたユーザーの方から「この仕組みを使って確定申告をしたい」というご要望をいただき、会計のサービスを開始しました。

現在は、『MFクラウドシリーズ』として会計・確定申告のほか、請求書、給与計算のサービスも展開しています。これらサービスは、個人向けの『マネーフォワード』も含めてシームレスなデータの連携が可能になっています。

日本の商習慣ではとくにバックオフィス系はまだまだ効率化されていません。今後はアメリカなどがそうであるように、もっとクラウド化・効率化が進んでいくでしょう。
弊社はビジョンが「お金に関する悩みを解決する」ことなので、個人にかぎらず、法人のお金に関係している経営・バックオフィスに関しても、アカウント・アグリゲーションに加えクラウドという強みを活かして、トータルで支援するプラットフォームを目指しています。

現在BtoCもBtoBもトップレベルのシェアを持っているので、FinTechという業界をマネーフォワードが牽引していきたいと思っています。

−−日本でFintechが遅れていた理由は何だと思われますか?

浅野氏:一つは文化的な要素でしょうか。例えばアメリカではクレジットカード社会で、個人の経済活動がかなり電子化されているので、自然とそれをクラウド上で管理するということが受け入れられたと思うんですね。

一方日本は、クレジットカードや電子マネーの利用率は高まってきてはいるもののまだ現金が中心の社会です。ただ今後現金が中心ではない時代に必ず変わっていくと思います。

取材担当より一言

サービスづくりのヒントが多く詰まったインタビューでした。企業文化として、「エンジニアドリブン」を築き実践するということを徹底できている企業はそれほど多くないのではないでしょうか。また、「お金に関する悩みをトータルで解決する」ということが、上位のビジョンとしてあるので、お金に関してユーザーがどういう悩みを「潜在的に」抱えているかについて、本当によく考えられていると思いました。本来なら、個人にしても法人にしても、お金に関してITの活用が十分に進んでいない日本において、マネーフォワードの展開するサービスは受け入れられづらいところもあるのかもしれませんが、トップレベルのシェアを獲得できているのは潜在的なニーズに訴えられているからでしょうか。むしろ、古くて効率の悪いやり方から、新しいお金管理の方法へと、人や企業の行動が変わっていくのを、FinTech最前線のマネーフォワードのサービスによって加速させしめているというのを感じました。



[リンク]
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YUKA NUNOI /
ぬのちゃんと呼んでください。よく、人間ではない様々な生き物(あるいは生き物じゃないもの)に似ていると言われる。世界の行く先と、そこでどう行動すればいいかについて、皆さんと考えていきたいです。好きな国はウガンダ。