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「GoogleやAppleの標準に沿うことがむしろ差別化」上場企業のニフティがベンチャーに負けないアプリ開発を次々に実現するための方針と体制とは?

インターネットサービスプロバイダ大手として知られているニフティ株式会社。実は近年、アプリ開発にも力を入れていることはご存知でしょうか? ここ5年間で、リリースしたアプリの数は30ほどにものぼります。

ニフティにおけるアプリ開発の位置付けや、短期間にアプリを数多くリリースできる理由といった点を中心に、WEBサービス事業部スマートデバイスサービス部部長の長谷川氏と、WEBサービス事業部WEBサービス開発部の猪飼氏にお話をお伺いしました。

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目標は、一般の人がハサミや包丁を使うような感覚で利用できるアプリ

――まずは、ニフティの事業においてアプリの事業はどんな位置付けなのでしょうか?

長谷川氏:まず、ニフティは3つの事業から構成されているのですが、アプリの事業はその中の1つであるWEBサービス事業に含まれています。アプリ開発にも2つの方向性があり、1つはニフティの既存のWebサービスをアプリ化する方向、もう1つが、我々が携わっている新規サービスとしてのアプリ開発です。アプリに力を注ぎ始めたのがこの4・5年で、累計30ほどのアプリをリリースしています。累計では約700万ダウンロードあります。

――様々なアプリをリリースされている中で、共通の軸はありますか?

長谷川氏:基本的には、どちらかというとITに詳しくない方々を対象にしたアプリを開発しています。近年スマホユーザーの増加によって、人々の行動に変化が起きていますよね。そんな状況で、アプリに関しても、ゲームだけでなく、人々の生活をより便利にするものがもっとあっていいのではという思いがあります。目標は、ハサミや包丁を使うような感覚で利用できるアプリですね。そのために、使いやすさと簡単さは特に重視しています。

サーバーサイドのコストを下げる自社クラウドサービス「ニフティクラウド mobile backend」

長谷川氏:また、弊社ならではの特徴でいうと他事業部が自社のクラウドサービスとして「ニフティクラウド mobile backend」を展開しているので、それを用いて開発できる点ですね。

――「ニフティクラウド mobile backend」とはどのようなものでしょうか?

長谷川氏:「ニフティクラウド mobile backend」は、スマホアプリで共通して必要となるサーバーサイドの機能をAPIやSDKを用いてクラウド上で提供するmBaaS(mobile Backend as a Service)です。プッシュ通知やSNS連携など、サーバーサイドで必要となる機能を簡単に実装できるので、アプリ開発者はユーザーサイドの開発に専念できます。

また、サーバーサイドの運用や、日々、サーバーを監視する必要もなくなるので、運用や保守のコストも削減できます。この自社サービスを用いることで、コストやリソースの削減を実現し、積極的なアプリ開発が可能となっています。実際、猪飼が担当しているメモアプリ「Frognote(フロッグノート)」には、サーバー側のエンジニアがいません。

なぜメモアプリ? 共有が特徴の「Frognote」が生まれた背景

――猪飼さんが担当されている「Frognote」について伺いたいと思います。まず、どうしてメモアプリを開発しようと思ったのでしょうか?

猪飼氏:まずは、どちらかというとITに詳しくない方向けのアプリを開発しようと思ったときに、スケールする可能性があるものとしてメモアプリが挙がりました。そこからどんなメモアプリを作るべきか議論をしていった際に出たのが、夫婦やカップル間での情報共有の際、口頭やLINEだと、結局忘れて揉め事が起きてしまう、そんな事態を未然に防ぐための、メモやToDoの共有ができるシンプルなアプリのアイデアでした。このアプリのニーズは実体験からも感じていました。

また、家族や近しい間柄での情報共有は最近注目を集めています。例えば、iOS 8以降では、ファミリー共有という機能が加わっています。これは、アカウントを共有することなく、家族でiTunes StoreやApp Storeから購入したコンテンツを共有できる機能です。このような共有の方法は今後より進んでいくのではという思いもあり、そうしたトレンドの追い風も感じています。

AppleとGoogleの標準に合わせることが逆に差別化

――「Frognote」の特徴は何でしょうか?

猪飼氏:1つは、OSの垣根を越えて情報共有できる点です。共有したい相手ごとにグループを作ることができ、グループ内に保存したメモは更新されると即座にプッシュ通知されるので、常に最新の情報を共有できます。

もう1つは、UIをAppleやGoogleが求める標準に適応させている点です。iOSの標準や、Googleのマテリアルデザインは、各デバイスにおけるユーザーの使いやすさを追求してつくられているものなので、そこに則ることで良いユーザー体験を作り出せると考えています。それぞれの標準に則っているので、デザインもiOSとAndroidとで少し違うんですよ。

もちろん自分たちらしいデザインに沿って設計することもブランディングとして一定の効果があると思うので、決して悪いとは思わないのですが、「Frognote」ではそのような方針にしたことが結果的に良かったと思います。

また、Googleも言っているように、マテリアルデザインを下敷きとして設計することで、結果的にコスト削減にも繋がります。とくにAndroidは端末のサイズが様々であることを考慮しても、そのとおりだと思いますね。

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上司よりもGoogleの言うことを聞け

――Googleのマテリアルデザインを採用していないアプリも世の中にはたくさんあると思いますが、そのデザインに沿って設計することは大変なのでしょうか?

猪飼氏:Googleのマテリアルデザインを理解することはそれほど大変ではないと思います。ただディレクターと開発者はガイドラインを読み込んでいて、迷ったり議論になったときにはマテリアルデザインを参照するようにしています。マテリアルデザインのすごいところは、それに沿えば本来デザイナーが行うような部分も、ディレクターやエンジニアでできるようになっていることです。アプリ開発においては、「誰がUI設計をするか」という問題が常につきまとうと思うのですが、「Frognote」の場合はディレクターとエンジニアどちらも設計することがありますね。

上司の意見よりもマテリアルデザインを優先するような風潮ができていると言っても過言ではありません(笑)上司が「こっちのほうが良くない?」と言っても、「いやいや、マテリアルデザインをきちんと勉強してください」というやりとりもありますね(笑)

マテリアルデザインに全て沿えばいいというものではないですが、実際沿った方がGoogleの純正のアプリと動きも揃いますし、結果ユーザーにとって良い体験を提供できることがあると思っていて、むしろそこが一つの差別化になっていると言えると思います。

――「Frognote」はどういった体制で運営されているのですか?

猪飼氏:時期によって変動があるのですが、基本5~6名で運営しています。部署を越えて、企画・開発を行っています。マーケティングに関しては、企画部門の社員が基本的には担当しますが、少人数のチームなので、意思決定はチーム全体で担っています。先ほど言ったように、サーバーサイドのエンジニアが必要ないこともあり、この少人数のチームが成り立っています。

多くのアプリは現場のアイデアが出発点

――新規アプリの企画はどのように生まれているのでしょうか?

長谷川氏:企画の部署しか、企画提案できないということはなくて、若手社員を中心に、部署の垣根を越えてアイデアを出してもらっています。アイデアコンペのような社内イベントも年に1回は行っていて、「Frognote」もそこから生まれました。また、温泉のアプリなどは開発部の新人からの提案でしたね。他にも、「スマホの依存度を測れるアプリをつくりたい」と言った社員がいて、それも実際「スマチュウ」というアプリとしてリリースされています。

若い社員たちからアイデアを出してもらいやすい環境にはしていますね。やはりスマホを当たり前に使っていますので確度も高いのだろうと思いますし。もちろん、やるからにはコストを掛けなければなりませんので、ビジネス的なジャッジは行っていますよ。

新規アプリのコストと収益の考え方

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――わりとベンチャーのようなフレキシブルさがあるんですね?

長谷川氏:弊社の全部が全部というよりは、この新規のアプリに関してはそうなっているという感じかもしれませんね。他のサービスでは、かっちりとした開発手法を採用している場合もあります。やはり相手がベンチャー企業などになるので、スピードやアイデアの豊富さで勝負することは重要だと思っています。100発のうち1発当たるかというのが業界の通説でもありますので・・・。

一方である程度のコストを掛けないと勝負ができない市場環境になっていて、かといってコストを掛けすぎるとプロジェクトが続かなくなってしまうのでそこのバランスは難しいと感じます。なので、ユーザーの期待値を上回るくらいのリソースをかけ続けながら、しっかり継続できるようにというところは意識しています。

とくにツール系は、場合によっては5~10年など長期のスパンで見ていかないと厳しいですので、「我慢」がとても大事ですね。

――マネタイズは今後という感じですか?

長谷川氏:そうですね。基本的には有償課金でのマネタイズを考えています。広告だけでは収益化が難しい部分もありますし、やはり課金して使ってもらえるくらいのものにしなければならないと思います。他社のアプリなどを見ていても、とくにツール系で成果を上げているアプリは有償課金のものが多いと思いますので。

――利益という面ではかなり長期で見ていかなければならない部分もあると思うのですが、積極的なアプリ開発に関して、会社全体としてはどういったところにメリットを感じているのでしょうか?

長谷川氏:弊社の従来のメインユーザーはPCベースのユーザーなので、アプリで新規のスマホユーザーを取り込むという狙いは一つあります。また、アプリでユーザーのデータを集めることが次のビジネスのきっかけになると考えています。

――今後も様々なアプリを出されていく予定なのですか?

長谷川氏:新規で開発していたアプリが今一通り出揃った状態なので、既存のものをより強化していく段階と考えています。今とくに注力していこうと思っているものとして、「Frognote」のほか、「おたよりBOX」という子供の学校や習い事で配布されるプリント類を写真で撮って簡単に整理できるアプリや、スーパーのチラシや特売情報で作れるレシピを閲覧できる「シュフモ」などがあります。

どのアプリでも意識しているのは、クラウド側でいかに価値をつくっていくかということですね。もちろん、使いやすさは追求しつつ、しかしもうアプリの表側だけで差別化するのは難しくなると思っているので、ユーザーの声を聞きながらどう価値を作っていくかということを考えています。

編集後記

「どちらかというとITに詳しくない方々の暮らしを便利にすること」を軸としてアプリを多数リリースすることは、短期間で収益に結びつきにくいため、ベンチャー企業よりもむしろニフティのような大企業だからこそ、思い切ってチャレンジできることなのかもしれません。

また、GoogleやAppleそれぞれの標準に則るためにそれぞれでデザインが異なる、という点はユニークなポイントだと思いました。少人数でエンジニアとディレクターの垣根が良い意味で曖昧になっていることや、他事業部の自社サービスがサーバーサイドをカバーしているといったならではの体制が、スピーディな開発とユーザビリティの追求を実現しているように思われました。なにより、現場からどんどんアイディアが生まれそれが実現されている環境はぜひ真似をしたいですね。

(聞き手・編集:布井 文筆:長島)

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MAITO NAGASHIMA / Internship
セカイラボでインターン中の学生です。社会人に間違えられることが多いですが、大学生です。グローバル化が進む時代をどう面白く生きていこうか思索しながら、バイト先の映画館でポップコーンをつくる日々を過ごしています。好きな国はスウェーデンです。