ビジネスSNSサービスを提供するWantedlyは、2016年11月11日に新しい名刺管理アプリ『Wantedly People』をリリースしました。サービス提供開始からわずか1週間で20万枚の名刺登録実績を叩き出し、いま最も注目の名刺管理ツールとなっています。
今回は、そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのWantedly Peopleの開発に携わったリードエンジニアの相川 直視さんとデザインを担当した青山 直樹さんにインタビューをさせて頂き、実際の開発現場からの視点をみなさまにお届け致します。素敵なオフィスも見どころです!
Wantedly Peopleとは?
受け取った名刺全てを、1回の撮影で同時に読み込み、データ化
する名刺管理アプリサービス。人工知能と機械学習を用いて、使い
こむほど賢くなる。連絡先交換も各SNSと連携しており、スムーズ
に行えるので、人脈構築に最適な機能が豊富に備わっています。
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ーー本日は、よろしくお願いします。
相川さん)
青山さん)
よろしくお願いします。

青山さん(左)相川さん(右)
ーーまず、簡単にこのアプリが立ち上がった背景を教えてください。
相川さん)
先日のリリースでも発表させて頂いたのですが、現在Wantedlyはリブランディングを行っており、もともと「Sync」と呼ばれていたものは、『Wantedly Chat』、ビジネスマッチングの役割をメインで担うのが『Wantedly Visit』、そしてビジネスでのコミュニケーションや人脈を築くためのプラットーフォームがこの『Wantedly People』です。
私たちのメッセージである「シゴトでココロオドル」人を増やすためには、転職だけではなくしっかりとビジネス上での人脈を自分の力で作り上げていくためのプラットフォームが必要なのではないかという問いが発端でした。
海外ではあまり名刺交換を頻繁にする機会はあまり多くないと思いますが、日本の場合は名刺交換の文化が深く根付いていますので、その部分は重んじて名刺交換アプリという形で私たちの想いを体現してくれるプロダクトを開発したということです。
ーーなるほど、現在名刺交換アプリと言えば大手競合サービスがいくつもある印象ですが、そのあたりの競合調査などはかなり綿密に行ったのでしょうか?
相川さん)
Wantedlyでは競合を意識してプロダクトを決めていくことは基本的にしないのですが、Microsoftが出しているOffice LensやEvernoteのScannavleについては、かなりプロダクトとして意識していますね。

使えば使うほど賢くなる名刺管理アプリ「Wantedly People」
ーーかなり野心的な思い入れと技術がこのアプリには注ぎ込まれていると思いますが、技術的に大きな特徴はどのような点でしょうか?
相川さん)
プレスリリースでも、「同時に10枚 瞬間データ化」というコピーを打っていますが、複数枚の名刺全てを1回の撮影で同時に読み込むという機能には、かなり高度な技術を用いています。基本的に手を加えていない部分はゼロです。
青山さん)
現在の名刺管理アプリで名刺を1度に複数枚正確に認識出来るサービスはないと思います。
ーー具体的にどんな技術を活用しているのでしょう?
相川さん)
ごめんなさい!詳しいことは企業秘密なのですが、開発上の課題として、複数の四角形を1度に認識させるということに非常に苦労をしました。

秘密と言いつつもわりと詳しく教えてくれたツンデレ相川さん
ーーデザインに関しても伺っていきたいのですが、この「Wantely People」は非常に青と紫のグラデーションが美しいですよね。どのようなコンセプトでデザインを考えられたのでしょうか。
青山さん)
「個人が」つながりを作っていくためのツールとして、固いビジネスの印象や会社っぽさを取り払って、普段使いしてもらえるデザインを目指しました。ビジネスアプリとしてはカジュアルな印象を与えるグラデーションも、その一環です。

紫のグラデーションが印象的
実は、ポケモンGOを始めゲームアプリも参考にしていて、名刺をGETすることに楽しさ、達成感を感じられるUXを作ろうと努力しています。
ーーたしかに名刺交換は、ゲーム的な面白さがあると思います。基本的にデザインを考えてから開発を行うのでしょうか?
青山さん)
いえ、弊社の場合はデザインと開発作業が並行して進行します。デザインを作っている途中に開発もしてしまうんですね。
相川さんは、メインのアルゴリズムは決めるしエンジニアリーダー的な存在ですが、マネージメントだけを専任で行うメンバーはいません。Wantedly全体の文化として、みんなで作るイメージのほうがより現実に近いですね。
ーーなるほど、企業文化がそのまま開発現場の雰囲気を作っているんですね。開発体制としては何名でまわしているのでしょうか?
相川さん)
現在は、エンジニア8名でその他ビジネスサイドなど数名です。最初のプロトタイプの開発は、2名で2週間の中で、他の業務もやりつつ実質3日間だけ使用しました。
ーーすごいスピード感ですね。当初はどのようなプロトタイプだったのでしょうか?
青山さん)
実は初期開発のプロトタイプから方向性が大きく変わるようなUIや機能の変更はしていないんです。そこから細かい改善を繰り返していって、最後のリリース前にガッとクオリティが上がったと思います。
技術的にも新しいことをやっているので、認識精度やスピードが向上するごとにUIも変えていかなければいけませんでした。0.2秒の認識速度の違いでもユーザーの体験が変化するので、それに合わせてデザインを変えていく必要がありました。
ーーそれでは、直前のブラッシュアップまでデザインが中々決まらず、かなり大変だったのでは?
青山さん)
プロジェクトが始まる当初から、変更を繰り返してより良いプロダクトを目指していく開発フローを想定していましたので、最初の1週間で大雑把なデザインを作っていつでも修正可能なように調整して進めていったので、それほど大きなストレスは感じませんでした。
ーーかなり順調な開発だったんですね!
相川さん)
この『Wantedly People』は、Wantedlyアワード「YA1」の日を目指して開発していたのですが、どうしても当日までに間に合わなかった機能や敢えて入れなかった機能もありました。
例えば、ログイン機能です。当初は絶対に必要だろうと思っていたのですが、最後の3週間で社内でイケてない部分の意見を集めたら、やはり今はログイン機能は必要ではないという結論になりました。
色々計画していた機能もあったのですが、名刺管理アプリなのだから、まずは大前提となる名刺の認識クオリティを上げてユーザーが使っていて気持ちいいと思ってもらえなければ意味がないと考え、シンプルな機能に絞り実装しました。
新しいサービスということで、マネタイズが気になるところですが、そのあたりはいかがですか?
相川さん)
現時点ではマネタイズは考えていません。それ自体で課金するというよりは、まずはみなさんに気持ち良く使ってもらえればという感じです。ユーザーが本当に求めている価値があれば、自然とお金がまわる仕組みが出来上がってくると思うので。
ーーユーザー数のKPI(目標数字)などは設定されているのでしょうか?
相川さん)
来年の3月時点で100万枚の名刺スキャン数を目標に置いています。スタートダッシュの1週目で10万枚という目標を立てていたのですが、フタを開けてみたら倍の20万枚という結果でした。しかも、アプリDL数の推移は現時点で一度も落ちていないので、この調子でどんどん加速していきたいですね。
ーー素晴らしいですね!それでは、今後の展開についてぜひ教えてください。
相川さん)
まだまだ追加していきたい機能やユーザーのみなさんの声を反映して、品質改善のために反映していきたいです。
あと伝えたいことは、リンダ・グラットン著『LIFE SHIFT』という本の中でも触れられていますが、現代社会に生きる人は、「100年生きて85歳まで働かなければいけない世の中」で生き抜いていかなければいけません。今、自分がいるひとつの会社に一生勤め上げる人は従来の多数派から少数派になってくるはずです。そのような自分の居場所を移す際に役立つのは、今後は会社に紐付く人脈だけでなく、個人に紐付く人脈がより重要になってくると思います。
このサービスを通して、会社が個人に人脈を貸すのではなく、個人の人脈を会社に貸してあげるようなアプリになれればと願っています。
青山さん)
相川さんがまさにおっしゃっていたように、今は個人の持つ繋がりが大きな力になってきている時代です。このサービスを使うことで、個人の持つ繋がりの力をより多くの人が活用して、新しい働き方にシフト出来るようになればと信じて頑張っていきたいです。
ーー本日はありがとうございました!
インタビュー後記
会社の看板のみで生き抜く時代は終わりつつあり、これからはそれぞれの個人名が看板となり新しい人脈や働き方が生まれるというテーマは、とても共感出来ました。Wantedly Peopleは、そんなこれからの厳しい時代を生き抜いていくためのサバイバルツールなのだと思いました。みなさんも、是非ダウンロードして自分だけの武器を身に付けてみてください!
聞き手/文/編集:花岡
撮影:竹内
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